私は志王銀星という男を見くびっていた。


銀星はこの学校に来てから、前王に挑んだ時以外は一度も自分から喧嘩を売ったことがないと聞いていたが、その銀星がたかが女ひとりの為にここまでするとは思わなかった。
同時に、なぜ私なんかにそこまで固執するのかがわからない。
私は銀星の理解の範疇を超えた行動が、恐ろしかった。


空き教室には誰もいなかった。


私を抱えていた銀星の手が離れ、ソファの上に投げ出される。


「……っ」


声にならない悲鳴をあげて、私は銀星から離れようと後ずさった。


だが、銀星は私の上にのしかかるとキスをしてくる。


私は大人しくそれを受け入れ、目尻から涙がこぼれるのを感じて悔しさに顔を歪めた。


銀星はそれを冷めた目で見つめ、唇を離すと私の髪を撫でながら言った。


「……お前、俺よりもあの木下とかいうオメガのほうがいいって言ったらしいな」


銀星の言葉に目を瞠る。