中庭には人だかりが出来ていて、生徒達が野次を飛ばしている。


「あいつも馬鹿だよなぁ、オメガのくせに王に挑むなんてさぁ」


「そもそも、王にタイマン申し込めるのはアルファだけじゃねぇの？」


人だかりに近付くと、野次馬達が口々に勝手なことを言っているのが耳に入り、不快な気持ちになる。


私は人だかりに向けて一言、「退いて」と言い放った。


すると、生徒達の熱狂がぴたりと収まり、私に道を開ける。


人だかりの中心に、傷だらけの状態で立ちすくむ木下と、それを見据える銀星の姿があった。


「木下……！」


私は真っ先に木下の名前を呼んで彼に駆け寄る。


木下は全身ボロボロの姿のまま、それでも銀星から目を離さなかった。