何だかくすぐったい感覚だ。


木下は美形というわけではないし背も高くない。だけど銀星よりも優しいし、銀星の女になるくらいなら木下と付き合ったほうが幸せになれそうな気がした。


……私のその甘い考えが、後に悲劇を生むとも知らずに。


*****


翌日、私はいつものように学校へ行き、席に着いて読書をしながら時間を潰した。
だが、普段なら私よりも先に来ているはずの木下の姿が見えない。
木下がアルファの生徒達に暴行を受けている光景を思い出し、何やら嫌な予感がして、私は教室を出た。


木下を探して校内を歩き回るがなかなか見つからず、私が一度教室に戻ろうとした時だった。


「おい!中庭で王がオメガの1年とタイマンはってるぞ!」


びくりと身体が震える。


オメガの1年……まさか、木下だろうか。


アルファに一方的にやられるほど喧嘩の弱い木下が、王である銀星に敵うはずがない。


今すぐやめさせなければ、と思った私は全力で廊下を走り抜け、中庭に出た。