私は収まっていた怒りが徐々にぶり返すのを感じて、気がつくと木下の腕に自分の腕を絡ませていた。


「そう?私は王よりも木下のほうが好きだけど」


私の言葉に、生徒達がざわめく。


嘘は言っていない。


恋愛感情かどうかは置いておいて、銀星よりも木下のほうが人間として好ましいのは確かだ。


「……姫川……」


私を見下ろす木下の顔は赤く、瞳は潤んでいる。


一瞬、銀星に「他の男に触れるな」と言われたことが頭をよぎったが、銀星の言うことに従う義理などないと、その思考を振り払った。


その時、先生が教室に入って来て、私達はお互いに無言のまま自分の席に戻った。


授業中、私がこっそり木下のほうを見ると木下もこちらを見ていて、目が合った私達はすぐに視線を逸らした。