木下が怒っているところを初めて目の当たりにし、私は面食らって一瞬怒りを忘れた。
だが、生徒のほうは動じる様子はない。


「なんだよ、お前だって気になるくせに。好きなんだろ?姫川のこと」


「なっ……」


生徒の言葉に木下は言い返さず、顔を赤らめて固まった。


「残念だったなぁ木下。ガチなのか遊びなのかは知らねぇけど、王ってめちゃくちゃ独占欲強いらしいから、一度手に入れたもんは絶対他人には触らせねぇって言うし、お前ごときじゃ勝ち目ゼロだよ」


「元々王とオメガじゃ勝負にもなんねぇけどな」


生徒達が口々に言って可笑しそうに笑う。


木下は生徒から手を離すと無言で俯いた。