「ちょっと……離してください。授業が……」


「へーきへーき。銀星の呼び出しならサボり扱いにならないから」


「そういう問題じゃなくて……!」


私は思わず木下を振り返るが、木下は困った顔でこちらを見送るだけで、助ける素振りもない。
そんなにアルファが怖いのだろうか。


私は何とかして手を離そうと腕に力を入れるが、男も力を込めて私の手首を握り、決して離さない。


「君さ、銀星にはあんまり逆らわないほうがいいぞ。あいつ、キレると何するかわかんねぇから」


男が私のほうをちらりと振り返って言う。
私が何か言おうと口を開いた時、「着いたよ」と言って男が立ち止まった。


連れてこられたのは、3年生の教室がある校舎の外れの空き教室だった。


だが、廊下側の窓には黒いカーテンがかけられて、中の様子がわからないようになっており、異様な雰囲気を醸し出している。