「……私に何か?」


「そう警戒すんなよ。銀星がお前をご所望だから、俺が呼びに来ただけ」


男の言葉に、周りにいる生徒達がざわめく。


カースト最上位の王が唯一の女子生徒を気に入り、呼び出したことがよほどショッキングだったのか、彼らはこそこそと話しながら私と男を交互に見た。


学校に女ひとりという状況から、見世物にされるのには慣れているが、さすがにここまで注目を浴びると不愉快だった。


「王様が、私のようなオメガに何の用があると?」


眉間に皺を寄せたまま告げると、隣にいる木下が焦ったように「おい……アルファにそんな態度取ったら……」と口を挟んできた。


だが、目の前の男は一瞬目を見開き、やがて豪快に笑いだした。


「君、アルファの俺によくそんなこと言えるなぁ。銀星が気に入るのもわかるよ」


一人で納得したようにうんうんと頷き、男は私の手を掴んで歩き出した。