王ではなくて、アルファが来ている。


アルファに親しい人なんかいないし、ましてや3年生なんてろくに話したこともない。


怪訝な顔をする私に、人だかりの中から「君が例のお姫様?」と誰かが話しかけてきた。


生徒達が左右に分かれて、その間を男が歩いてこちらに向かって来る。


「へぇ、あの銀星のお気に入りだっていうからどんな子かと思えば、随分と古風な感じなんだな」


そう言って興味深そうに私を見つめるのは、無造作に跳ねさせたアッシュブラウンの髪に、日に焼けた精悍な顔つきの、指にごつい指輪をいくつもつけた男だった。


……銀星の知り合いか。


そう思った私は男を睨みつけた。