復讐してやるつもりだったのに。


お兄ちゃんが行方不明になった3年前から、ずっと憎んでいた男。
そんな男に喧嘩で負けた挙句、自分の女になれと要求されるなんて……。


悪夢だ。


*****


翌日、私はのろのろと並木道を歩きながら、また溜息をついた。
学校に行きたくない……そんなふうに思ったのは初めてだった。
だが、私の意思とは反対に理性が身体を動かし、学校に辿り着く。


教室に向かうと、何やら生徒達が騒がしい。


「あっ、姫川!」


教室前の人だかりの中から木下が出てきて、私の腕を肘でつつく。


「お前、昨日一体何したんだよ。3年のアルファがお前を待ってるぞ」


「……アルファ?」