銀星は私を解放すると、「今日はもう帰れ」と告げて去っていった。
しばらく呆然と座り込んでいた私の元に、「姫川!」という叫び声とともに木下が駆け寄って来た。


「大丈夫か!?……あれ、王は?」


木下は私の側にしゃがんできょろきょろと辺りを見回す。
あんなに銀星に怯えていたのに、追いかけて来てくれたのか。
私は密かに木下に感心したが、今は彼のことを思いやる余裕がなかった。


「……ごめん木下。私、今日はもう帰るね」


「え!?姫川……?」


私は立ち上がり、目を丸くする木下を置いてその場から立ち去る。


まだ銀星の感触が残る唇を手の甲で拭い、怒りに震える身体をそっと抱きしめた。