顔が近付き、唇に何かが触れる。


銀星にキスされている。


そう気付いた私は、優しさなんて欠片も感じられない冷たい唇を思いきり噛んだ。


「……」


銀星は何も言わずに唇を離し、口元から流れる血をぺろりと舐め取って、言った。


「姫川美羽。今日からお前を俺の女にする」


「……は……」


意味がわからず、私は口を開けたまま固まった。


「タイマンに負けたほうは勝ったほうに絶対服従。それがうちのルールだろ」


「だからって……なんで私を!?」


どうやら本気で私を自分の女にするつもりらしい銀星の考えが理解できず、私は叫んだ。


だが、銀星は楽しそうに唇を歪めて私の頬を撫でた。
その指先の感触に肌が粟立つ。


「お前を気に入った。だから欲しくなった。それだけだ」


気に入った?
自分を倒そうと襲いかかってきた女を?


私は、目の前が真っ暗になっていくのを感じた。


そして、木下が小型犬なら、この男は狼そのものだと思った。


獰猛で、獲物を狩ることを楽しんでいる肉食獣。


私は、とんでもない男に捕らえられてしまった。