悔しくて、身体が震える。
今まで本気の喧嘩で負けたことなんてなかった。
たとえ男相手でも、全員返り討ちにしてきた。


それなのに、一撃も食らわせられないまま、呆気なく負けるなんて。


私は心だけは負けたくなくて、銀星の顔を睨みつけた。


「……お前、名前は?」


銀星が私を見つめながら聞いた。


「名前はって聞いてんだよ」


何も答えない私に焦れたのか、肩を押さえつける手に力が込められ、痛みが走る。


「……姫川美羽」


私は仕方なく名乗ったが、大嫌いな相手に従う行為はこの上なく屈辱的だった。


「……姫川……」


銀星は何かを考えるように逡巡した後、ふいに笑った。