「や、やめてくれ……!もう金なんかねぇよ!」


人だかりの中心にいるのは、同じクラスの木下一也(きのしたかずや)だ。
黒に金のメッシュが入った独特の髪色は悪目立ちしているので、すぐにわかる。


顔には殴られた跡があり、自分を取り囲む男子生徒達から逃げるように後ずさっている。


「あぁ?てめぇオメガのくせにアルファの俺らに逆らうわけ?」


男子生徒のひとりがそう言って、木下の身体に蹴りを入れる。
木下は「ぐぅっ」とくぐもった呻きを漏らし、うずくまった。


「オメガは大人しくアルファに従ってりゃいいんだよ。それがうちの学校のルールだ」


男子生徒達はゲラゲラと笑いだし、その中心で木下が悔しそうに俯いている。