その後、銀星は大神高校を自主退学した。


王が突然いなくなったことに生徒達はざわつき、我こそが次の王だと生徒同士で揉め始めたが、銀星に次の王に指名された者が、争いを止めてカースト制度の廃止を宣言した。


生徒達は最初は反発していたが、暴力に訴えた者は皆王とその側近に返り討ちにされて、次第に文句を言う者は減っていった。


そして、元オメガ達を中心に王を慕う者達も現れて、カースト制度の廃止により王が王でなくなった今も、王として敬愛し続けている。


そうした動きは元ベータや元アルファにも広がり、やがて校内の雰囲気は穏やかなものに変わっていった。


それでもやはりいざこざは起きるものだが、銀星の父の支配から抜け出した教師達がようやく彼らを取り締まり始め、大神高校の治安は以前よりもだいぶマシになった。


*****


今年も学校へ続く並木道は桜の花が満開だった。


私は桜のアーチがかかった青空を眺め、ゆったりとした足取りで校門をくぐる。


そんな私の姿を見つけると、生徒達が次々に頭を下げて挨拶をする。


「おはようございます、姫!」


「……おはよう」


私が挨拶を返すと、生徒達は恋する乙女のように「姫におはようって言われたぞ!」と興奮する。


私はそんな生徒達を見て、内心溜息をついた。