「でも、先生が学校を辞めて二度と俺に近付かないっていう条件で、俺は解放された。その後、先生が失踪したことを聞いて……俺のせいだと思った。それから、なんか何もかもがどうでもよくなって、喧嘩ばっかりするようになった。大神高校に入学したのも、相手になってくれる奴が沢山いると思ったからだ。だけど、王になっても俺は満たされなくて、毎日イライラしてオメガやベータの連中に八つ当たりしてた」


少し前までの銀星を思い出し、私は胸が締め付けられるような痛みを感じた。


「ずっとこんな日々が続くと思ってた……なのに、お前が全てぶち壊した。突然俺の目の前に現れて、俺の心を簡単にかっさらっていったんだ。お前の手首のブレスレットを見て、すぐに先生の妹だってわかったけど、そんなことどうでもよくなるぐらい、俺はお前のことが欲しくてたまらなかった。……そのせいで暴走して、お前やお前のクラスメイトのオメガにも酷いことしちまったな」


銀星は過去の行いを悔いるように、そっと目を伏せた。


「お前が俺の力を利用しようとしてたことを知った時は、お前に裏切られた気がしてすげぇつらくて……でも、お前は俺を受け入れてくれた。だからこそ、これ以上側にいちゃいけないって思ったんだ。もう母親みたいにあの人に振り回されて傷つくところを見たくなかった。……それなのに、お前は……」


銀星はそこで一回言葉を切り、私のほうに優しい眼差しを向けた。