「あの人は俺を優秀な息子にしたかったらしくて、でもあの人の期待に応えられなかった俺は、いつもあの人に殴られてた。母親も俺を庇って殴られて、その怪我が原因で立ちくらみを起こして、駅のホームから落ちた」


銀星は苦しげに眉根を寄せて、深く息を吐き出した。


「それからあの人は愛人だった若い女と結婚して、弟が生まれた。弟は俺と違って優秀だったから、あの人に可愛がられていた。俺は継母からも嫌われて、家に居場所がなくなって、夜の街をぶらついて喧嘩に明け暮れるようになった」


銀星の悲痛な声が痛々しい過去を語る。


私は思わず銀星の手をぎゅっと握りしめた。


「……だけど、先生だけは俺を気にかけてくれたんだ。いつも腹を空かせてた俺にメシ奢ってくれたり、話を聞いてくれたりした。でも、もう先生から聞いてると思うが……あの事件が起きて、先生は俺を助けるために不良達を殴った。そしてそのことが問題になって、学校辞めさせられそうになったんだ。俺はあの人に先生を助けるように頼んで、代わりに二度と家から出ないと約束した」


銀星は、どんな気持ちで父親に頭を下げたのだろう。
私なんかには想像もつかない苦悩があったのかもしれない。