お兄ちゃんは一体どうしたのだろう。私を家から運び出す時に気付きそうなものだが……まさか、お兄ちゃんもやられてしまったのか。


私は素早く辺りを見回した。何か武器になりそうなものはないか、どうにかして拘束から逃れることは出来ないか、考える。


だが、男が急に私に顔を近付けて言った。


「お前……全然びびってねぇな。なるほど、あの息子の女なだけあって、肝が据わってるな」


私は男を睨みつけた。


その時、ギギギ……と何かが軋む嫌な音がして、工場の扉がゆっくりと開かれる。


「なんだ、もう来たのか。早かったな」


そう言って男達が立ち上がり、扉のほうへと歩き出す。


現れたのは、額から血を流しながら肩を押さえている銀星だった。


「入口の連中にやられたのか。大神高校の王様とやらも、大したことねぇんだなぁ」


男達が顔を見合わせてゲラゲラと笑い出す。