何か、長い夢を見ていたような気がする。


私はぼんやりとした視界に思わず銀星の姿を探したが、いるはずもない。


辺りを見回すと、そこは古びた廃工場のような場所で、私は床に寝かされて腕を縛られ、口を布で塞がれていた。


銀星の家で、女性に騙されて睡眠薬の入った紅茶を飲んでしまい、意識を失ったはずだが……なぜ、こんなところで縛られているのだろう。


「お目覚めか?」


暗闇から声がして、いかにもチンピラといった感じの男が数人、姿を現す。


「全く、お偉い議員の先生も悪どいことするよなぁ。息子を痛めつけるためにこんなか弱い女の子を人質にするなんてさ」


……私が、銀星を誘き出す為の人質?


いくら銀星が最強と呼ばれる王だからって、それはあくまで校内での話で、目の前のプロっぽいチンピラ連中相手に勝てるとも限らない。


銀星をここに来させてはいけない。