「理華さんのとこ戻んなくていいの?」


手を繋いで海岸沿いの道を歩きながら、銀星に問いかけた。


「後で荷物取りに行くし。友幸達にも俺から連絡入れとく。今はとにかく、お前を家まで送るのが先」


「……ありがと」


いつの間にか太陽が傾き始めていて、砂浜では小さな子供とその両親が楽しそうにはしゃいでいる。
その光景を見つめながら、私はふと自分のことを話してみようと思った。


「私、あんなふうに両親に遊んでもらった記憶ないんだ。私が荒れてた時も無関心だったし。……だから、実を言うとああいう光景って苦手だった。でも今は、素直にいいなって思うよ」


私の言葉を黙って聞いていた銀星が、ふいに立ち止まった。
銀星は振り返った私の頭を抱き寄せ、額にキスを落とす。
その感触に胸が疼くのを感じながら、目を閉じると私の世界は銀星の鼓動と波の音、そして幸せそうな家族の笑い声だけになる。