賢翔も私達を見てこれから何をするか察したみたいだ。迷わず電車に乗って街まで行き、ビルとビルの間の路地裏へと足を踏み入れる。
昼間でも薄暗い狭い道を歩いていると、少し開けた場所に辿り着いた。こんな奥まったところに、店があった。店と言っても今はもう営業していないらしく、「閉店しました」と書かれた紙がドアに貼ってある。


賢翔はためらうことなくドアを開けて、中に入った。私と友幸も後に続く。
どうやら昔は飲食店だったらしいその店内には、大神高校の制服を着た男達がたむろしていた。
彼らは賢翔と友幸を見て慌てて立ち上がり、居住まいを正す。


「賢翔さん、友幸さん、お疲れ様です。今日はどうしたんですか?」


「ちょっと聞きてぇことがあってな」


私はその時ようやくここにいる彼らが、私を襲ったベータ達だと気付いた。向こうも私の存在に気付き、気まずそうに目を逸らす。


「お前ら、ほんとは誰かに指示されて動いてたんじゃねぇのか?」


賢翔がいつもの忠犬っぷりを捨て去って、怒気を滲ませながらベータ達にガンを飛ばす。
ベータ達はお互いに顔を見合わせ、笑顔を作った。


「な、何のことですか?」


「すっとぼけてんじゃねぇよ。腕へし折られてぇのか?あぁ?」


誤魔化そうとするベータ達を威嚇するように、賢翔が側にあったテーブルを蹴り飛ばした。
ベータ達は震え上がり、土下座する勢いでその場に跪いた。