ぶたれる、と思った私は身構えるが、その時聞き慣れた声が響いた。


「やめろ」


生徒の動きがぴたりと止まり、私達が声の主を見ると、銀星が感情を感じさせない無表情でこちらを見ていた。


「王……」


生徒達は舌打ちすると、足早にその場から立ち去る。


私は安堵して、木下のほうを見た。


「大丈夫?」


「あ……」


だが私の言葉が耳に入っていないのか、木下は銀星を怯えたように見て、ガタガタと震えている。


その尋常ではない様子に、木下にとってこの間銀星にボロボロにされて負けたことが、それほど心に傷を残したのだと悟った。


「木下……もう大丈夫だから」


私は木下の肩を撫でながら何とか落ち着かせようとするが、木下はうわ言のように「嫌だ……やめてくれ……」と呟きながら頭を抱えて俯いた。