オオカミボーイフレンド

「……なんで?」


私が訝しげに聞くと、木下は彼が犬だったらちぎれんばかりにしっぽを振っていそうな笑顔で私に迫ってきた。


「今朝の礼がまだじゃん?金のことなら心配しなくていーよ、俺バイトしてっから」


私は呆れたように溜息をついた。


「お礼なんていらない。弱いものいじめが大嫌いだから見過ごせなかっただけで、あんたのためじゃないし」


「それでも、俺は嬉しかったんだよ。今まで俺らオメガが酷い目に遭ってても助けようとする奴は一人もいなかったから……」


木下は頬の絆創膏を人差し指でポリポリと搔く。


「だから、行こうぜ。女ってパンケーキとかそういうオシャレなもんが好きなんだろ?SNSに載せたりとかさ」


「悪いけど私そういうのやってないの。甘いものとか興味ないし」


「……どうしても駄目か?俺は姫川ともっと仲良くなりてぇんだけど」


私の頑なな態度に心が折れたのか、木下は悲しそうな表情でこちらを見つめてくる。