オオカミボーイフレンド

……でも、お兄ちゃんはもういない。


突然学校を辞めさせられて、その後行方不明になった。


私はお兄ちゃんが辞めさせられた原因を知っている。


お兄ちゃんの生徒だった志王銀星……あの男の父親が、息子の不祥事を揉み消すために学校に圧力をかけ、お兄ちゃんを辞めさせたのだ。


私は手首に付けた蝶のチャームが付いたブレスレットに触れる。
昔、お兄ちゃんが誕生日に私にくれたものだ。


「……お兄ちゃん……仇は絶対にとるからね」


志王銀星を倒して私がこの学校の王となり、腐りきったカースト制度を廃止する。


それが私がこの学校に入学した目的だった。


*****


放課後、下校する為にローファーを履こうとしている私に、また木下が近付いてきた。


「姫川、今日ヒマ?駅前に新しくできた店行かねぇ?そこのパンケーキがめちゃくちゃ美味いんだってさ」


木下は今朝アルファの生徒に暴力を振るわれて怯えていたのが嘘のように、明るく私に話しかけてきた。