「……ん」
 意識が少しずつ戻ってくる。

 そんな中、肢体に感じるのは、ひったくりに遭い、打ちつけたはずの硬いコンクリートの感触ではなく相反するふかふかな感触。

 あー、気持ちいい。上京する時に家具を見にいき、高額すぎてあきらめたベッドみたいだわ。

 体全体の重さを均等に受け止めてくれている。このまま眠ってしまいたくなるくらいに気持ちいいけれど、今の自分の置かれている状況を確認しなければと、まぶたを開けて上半身を起こした。そして、目に飛び込んできた光景に絶句する。

「え」
 自分がいる場所を確認すると、ベッドの上。
 そこまではいい。感覚でなんとなくわかっていたから。でも──。

「ここ、どこ?」
 私が眠っていたのは天蓋付きのベッドだった。
 ピンクのレースカーテンがベッドの四方をぐるりと囲んでいる。まさか憧れの天蓋付きのベッドなんて!と、ちょっと興奮する。

「部屋もすごいなぁ」
 天蓋のカーテンを開けてその外を覗くと、絢爛豪華な世界が広がっていた。

 黄金の天井は中央部分が白で塗りつぶされ、今にも飛び立ちそうな二羽の青い鳥が描かれていて、その臨場感に心がときめく。

 さらにその天井からは、最高級ホテルでしか見たことのないようなシャンデリアがつるされている。そのまばゆさに驚くばかりだ。

 ここがどこなのか、なにかヒントが見つかるかもしれないと思って、辺りを見回してみる。

 視界に広がるのは、銀の縁取りが施された姿見に、美術館に展示されていそうな風景画など、ヒントどころか、私の普段の生活ではなじみのないものばかり。

 ここはヨーロッパの貴族の部屋ですと言われても不思議に思わないくらい、きらびやかな部屋――とにかく、どこを見てもなんの手がかりも掴めない。

「どう見ても病院とは思えないから、お金持ちの家かなぁ」
 あの後誰かが私を見つけてくれて、病院ではなく自宅で介抱してくれたのかもしれない。

 女性の悲鳴も聞こえたし。

「誰かいませ……んっ?」
 ふとここで声の違和感に気づき、思わず喉もとを押さえた。
 普段の声と違って高めの愛らしい声になっている。
 あれ? 声変わり? 事故の衝撃で喉が損傷したのかな。

 首をかしげながらベッドから下りようとして、さらなる異変に気づく。

 白いワンピースから伸びているのは、ふにふにと弾力がありそうな子供の足。
 もともとモデルのように長い足だったわけじゃないけれど、今の私の足はどう見ても子供のものだ。

 私の身にいったいなにが起こっているのだろうか。
 見ず知らずの部屋にいたという戸惑いから、その部屋の豪華さへの驚き、そして自分の体がおかしくなっていることへの恐怖へ感情がチェンジしていく。

 まるで私が子供の体に乗り移ったみたいで、気持ちが悪い。
 夢でも見ているのかなぁと思っていると、部屋をノックする音が聞こえてきた。