それから1週間、先輩から毎日のように電話があり、脚本に関する要望や修正とともに、他愛もない世間話をするようになった。

1週間後、合格発表で大量に出された宿題を放置して、脚本を書き上げた。

その原稿を持って、私は、先輩との待ち合わせ場所に向かう。

初めて見る私服姿の先輩は、息を呑むほどかっこよかった。

そんな特別な格好をしているわけじゃない。

デニムとTシャツにMA-1を羽織ってるだけ。

それでも、中学の頃よりずっと身長の伸びた先輩は、それらをすらりと着こなして、見る人の目を奪っていく。

ファストフード店で原稿を渡し、緊張しながら向かいの席で先輩が読み終えるのを待つ。

目の前で自分の書いたものを読まれるのは初めてで、とても恥ずかしい。

だけど、先輩はその場で直しを入れたいからと、帰らせてはくれない。

しばらくして読み終えた先輩は、一言、

「うん! おもしろい!」

と言って褒めてくれた。

実里(みのり)ちゃん、ありがと。
 宿題大変なのに、こんなに早く仕上げてくれて助かったよ。
 お礼に勉強教えるから、明日は勉強道具を持って来て」

えっ? 明日?

私が理解できなくて、キョトンとしていると、もう一度言われた。

「明日は、勉強会な。
 また朝10時にここ集合」

そう…なの?

なんで、勉強会をすることになってるのか意味が分からないけど、人見知りの私は、それを質問することもできない。

ただ無言でうなずいた。

「じゃあ、勉強は明日からにして、今日は遊ぼう!
 実里ちゃん、行きたいとこある?」

えっ⁉︎

先輩と出かけるの?

今から?

なんでそうなるのか、さっぱり分からないまま、何か言わなきゃ!と思った私は、

「す、水族館!」

と答えた。

別に行きたかったわけじゃない。

水族館は、家族で週末に行くことになっているから、とっさに思い浮かんだだけだった。

「OK!
 じゃあ、行こう」

私は、生まれて初めて、男の子と出かけた。