「少し、思い出しました・・」


「記憶をか?」


「・・・はい」


たちまちシリウスの顔が真面目な顔に引き締まる。

その雰囲気に押されそうになりつつも、意を決して口を開いた。



「実は・・溺れた時に・・」


「そうか」


「ごめんなさい。怖くてすぐに言えなかった」


「・・・」


シリウスは黙って見つめている。

目を合わせるのが一気に怖くなった。


「声が聞こえてきたんです。多分・・記憶の断片」


「なんて?」


ドクン


ドクン


ドクン



「母の仇を・・・討て」


「・・・・」


「・・って」



恐る恐るシリウスの顔を見ると、その顔は変わることはなかった。


「それだけか?」


「え・・あ、はい」


「仇・・か」


深く考え始まった様に顎に手を添えている。


「あと、迎えに来るって」


「お前を?」


「はい・・場所は思い出せなかったんですけど・・何処かに」


「・・・そうか」


シリウスの顔は曇っていた。

言ったことを後悔するくらいだ。


「あの・・シリ」


「もうないな?」


ドクン


明らかにシリウスの表情が変わった。

険しく、眉をしかませ地面を睨んでいる様に見えた。


「・・・」


シリウスは無言で立ち上がると、何も言わずに部屋から出ていった。

部屋は凍てついた空気が漂った。

只事ではない事が起きた様に。


_やっぱり・・言っちゃダメだったのかもしれない・・。


ティファ顔を手で覆い、後悔した。

ただただ、後悔した。