「殿下!その者をお放しください!!」


近くにいた兵士が強引にシリウスからティファをはぎ取った。


「奴らを導いたのはこの女かもしれません」


_そんな!?違う!私は何も知らない!!


「ちが・・うっ」


大きな手で首を鷲掴みをされ、シリウスの前にひれ伏すように頭を地面に擦り付けられた。


「・・・」


ドキッ


見上げた先にいるシリウスの視線。

その視線は冷静、かつ冷徹にも見えた。

だが、すぐに兵士の手を払った。


「いや、こいつはそんな事が出来る様には見えない。ずっと城で俺と共にしていた。
そもそも今夜ここへ泊ると予定を立てたのはセシルだ。あり得ないだろう」


「しかし殿下!この者は黒髪の__」


「大丈夫だ。下がれ」


「・・はい」



シリウスに睨みつけられ、慌てて兵士は下がっていった。


「はぁ。飽きさせないな」


「シリウス・・皇子」


後ろから曲者を捕らえた兵士が戻ってきた。


「殿下申し訳ございません。素早い身のこなしで、逃げられました」

「そうか・・只者ではない動きだったな」


「は、しかし落とした武器とマントなど一式を手に入れました」


「城に帰ったらすぐに何処の国の者か調べろ」


「御意!」


淡々と事は進んでいくが、ティファの震えは止まらなかった。



_どうしよう。また言い損ねた。
これも私のせいだったらどうしよう。きっと・・私が黒髪だから。



恐怖で頭を抱え震えているティファに、シリウスは一度だけ頭をぽんと撫でた。


「お前のせいじゃない」


「あ・・」


しっかりと思っていることを見透かされていた様だった。



「俺は皇子だ。いつも命を狙われている。幼い頃からな。
だからお前のせいではない」


その言葉にはとても温かみが籠っていた。

ティファの心はその声に救われた。

同時に胸が高鳴った。

シリウスは自分を理解しようとしてくれている。

そう思えて、本当に嬉しかった。


「はい・・ありがとうございます」