着替えが終わると、シリウスのいるテントには食事が沢山用意されていた。

ティファが釣ったと思われる魚たちも調理され、豪華な料理へと変貌していた。

先に着替え終えていたセシルはシリウスの隣でまだ不機嫌そうに顔を膨らませているが、シリウスは動じていない。いつも通りの表情だった。

近くには苦笑いのフォルトとジノンが待機している。

他の兵士も定位置につき、見張りの任についていた。


「失礼いたしますシリウス殿下。お召替えが終わりました」


女性がティファの手を引きシリウスの近くに向かった。

その場にいた者全員がティファに視線を送った。

皆、目を丸くしている。

会話していた者もぴたりと口が止まった。


「ご苦労」


とシリウスが一言言うと、女性はティファをシリウスの前に座らせ奥のテントに戻っていった。

周りの状況にびくつきながらも、思い切って聞いてみた。


「あ、あの・・シリウス皇子」


「ん?」


「周りの皆が・・様子が変です」


まるで魔法にかかったのか、金縛りにあっているのか、ティファを見つめたまま固まっている。


「お前のその姿が珍しくて驚いているだけだろ」


「あ、そうなんだ・・」


その通りだ。

洗った髪はまだ少し濡れている。

艶めいてキラキラと光っている。

そしてそれを引き立たせるドレス。

今まで女性として、人として見ていなかった兵士たちが、一斉に「女」と認識した瞬間だった。


「でも、どうしてこんな服を?私にはもったいない」


「そりゃ・・皆を驚かせようと思っただけだ。予想以上の様だが」


少し楽しそうに口角をにやりとあげているシリウスだ。


「あれ、フォルトさん?」


ティファがちらりとフォルトを覗くと、ほぼ石化していた。


_ああ、シリウス様・・終わった。ティファをおめかしするなんて・・終わった。


と勝手に落胆している様だ。