黒翼の淡恋

ガタン

「あっ!!」


焦った肘で近くにあったグラスをつついてしまった。

テーブルから落ちそうになった。


パシッ!


「あ・・・」

「お前・・」


咄嗟の反応だった。

グラスを骨折している左手で受け止めてしまった。



「あ・・あの・・あわわ・・これはっ」


_どうしよう!腕が痛くない事がバレちゃった!!?魔女じゃない!!私は魔女じゃない!人畜無害なのに!!


血の気が一気に引いた。

急展開に動揺も隠せない。


「その腕・・見せてみろ」


ドキン!!!


「いやっ!いたたたっ!!痛いからダメです!!!」


「いいから!!」


強引に腕を持ち上げられ、包帯をほどかれた。



_神さまああああああっ(泣)


シュルルッ


「・・・」


シリウスは左腕を吟味している。

ティファは観念したかのように目を瞑って堪えた。


「あの医者、嘘ついたのか。骨折じゃなくて、ただの擦り傷だな」


「へ・・」


「大袈裟に包帯なんか巻きやがって」


医者に対して怒っている様だ。


「お前も、そんなにオーバーリアクションするな。面倒くさい」


「は、はい・・ごめんなさい・・」


_そうだったの!?骨折じゃなかったんだ。言われたことを信じていたから。


「早く食え」


「は、はい!!」


二個目のケーキをほおばっている最中、シリウスの表情は険しかった。

何か思いつめた表情で遠くを見つめていた事をティファは知らない。