黒翼の淡恋

その後、3人でララを埋葬した。もちろん後ろにはシリウス直属の兵士も数名一緒だ。

ティファは髪を束ね、布で覆い隠した。兵士への配慮だった。


「安らかに・・」


ララを拾った森の奥に深く埋め、石碑を立てた。


「ここで出会ったから、ここでサヨナラだな」


「そうですね」


しんみりとした空気が森を取り囲んだ。


「ララ・・」


ティファは溢れる涙を何度もぬぐった。


「失礼いたします、殿下」


兵士の一人が言った。


「その女性が噂の方ですよね」

「そうだが」

「これからどうなさるおつもりですか?処罰は?」


ドキン


ティファの心臓が跳ねた。

シリウスは仕事モードに切り替え、冷静に兵士に答えた。


「なんの話だ?」

「その者がララを殺めたのですよね?」

「いや?違うが」

「ですが、その者が傍にいて、愛犬のララ様がお亡くなりになられたとか」

「こいつの手で殺めたところをお前は見たのか?俺も、フォルトも誰も見ていない」

「いえ、ですが・・」


ギラリ。

シリウスの瞳が悟った様に光った。


「誰に差し向けられた?」


ドクン


「え・・」


兵士はたじろぐ。

シリウスの瞳は鋭く見透かそうとしている。


「お前は1年前から所属だったな。俺の監視か」

「な、何故そうなるのですか!?我々兵士達は皆、不安なだけです!その女を近くに置くなど・・」


「そういえばどうにかなると誰かに言われたのだろう」


「で、殿下!?お待ちください私は皆を思って・・」


すらり、とシリウスは腰に差している刃を兵士に見せつける。


「ひっ!そんな!や、やはり殿下はその魔女に取りつかれている!!?お助けを!!」


ドクン


怯える兵士の首近くにシリウスの刃があてがわれた。


「無能が。フォルト、こいつを拘束し吐かせろ」


「御意」


「・・へ・・」


「腰抜けは一切城にはいらん。故郷へ帰れ」


「そ、そんな・・そんな殿下!!私は何もっ!殿下ああぁ」


他の兵士に連れられて、その兵士は去っていった。


心配そうに見ていたティファと一度目を合わせ、シリウスは石碑を見つめながら真剣な顔で言った。


「見たろ。あいつは誰かに雇われて俺を監視していた。隙が無いかとな。城の中にも常に敵はいる。
フフ、醜いな。人は醜い。・・俺が唯一安らげるのは、ララを抱きしめたときだけだったのにな」



石碑を愛おしそうに撫でるシリウスの手を、ティファは無意識に握っていた。

そして自然と思った言葉が出た。


「私がララの代わりに・・」

「は?」


二人の間に妙な空気が漂った。

すぐに手を放し、ティファは慌てふためく。


「はっ!?え!?なんか変な事を言った!?///嘘!え!?」

「・・・」


シリウスは目を見開いている。相当驚いたようだ。


「な、なんでもないです!ごめんなさい!!」


恥ずかしさで俯いたティファの頭に

ぽん、と大きくてたくましい手が覆いかぶさった。



「変な女だ」


ドキン


その時のシリウスの表情は、せつなげで、はかなげ、でも柔らかい笑顔だった。

不覚にも魅入ってしまうほど、美しくも見えた。


「帰ろう」