黒翼の淡恋

シリウスが向かった先、それは訓練場だった。

一番奥にある個室。そこに籠った。

バシッ!!バシッ!!ガン!ガッ!!

手の甲がめくれるほどに壁を殴った。

血が辺りに飛び散った。


「うあああ!!くそごらああああ!!!」


バキバキ!!!


木でできた訓練用の人形を蹴りで破壊した。

外から訓練していた兵士が恐れおののいていた。


「い、一体シリウス様はどうなさったんだ!?」

「尋常じゃねえぞ」

「やべえって!誰か呼んだ方がよくないか!?」


ガンガン!!と壁に頭をぶつけ始めた。



_くそ!くそ!くそ!!負けねえ!!負けねえ!!



額から血が流れる。


「え!?兄上何をやってるんですか!!」


慌てふためいた兵士がたまたま通りかかった弟皇子・セシルを呼んできた。



「はぁ・・はぁ・・セシルーーぅ。付き合えぇぇ・・」


「いや、ちょ、無理です。というか、一体これは・・兵士達が相当怯えているんですけど」


個室から窓を見ると、兵士達が青ざめた様子でこちらを覗き込んでいた。


「ちっ。見るんじゃねえ!!」


バタン。

セシルを連れ込むと扉を閉めカーテンで中を隠した。


「ちょ、どうしたんですか!!」

「・・ララが殺された」

「え・・ララが!?だ、誰にですか!?」

「おそらく兄・・」

「え?」


「・・いや。俺だ」


セシルの前でシリウスは仰向けに寝転んだ。

腕で目を隠すように覆った。


「俺が・・殺したようなもんだ」


_多分・・考えなしにあいつに喧嘩ふっかけたせいだ。



「兄上・・」


セシルは滅多に見れない貴重な兄の涙を見た。

人生で初めてかもしれない。


「ララ・・すまねえ・・くそ・・」