この出来事は、瞬く間に噂になった。

シリウス皇子が黒髪の女を傍に置いた。監視という名のもとだが、傍にいるだけで災いをもたらすと信じられている最中だ。

それだけで城中は大騒ぎ。

元々変わり者とうたわれていたシリウスの噂に拍車がかかった。

フォルトは書類を整理しながらため息をついた。


「はあ。わかっちゃいましたけど。はあ。」


「よう、大変そうだなフォルト」


「ああ、ジノン。本当に」


大臣やら、侍女達に説明し、批判をくらいグッタリのフォルトの所へ現れたのはシリウスの弟・セシル皇子の側近・ジノンだった。


「なんだってシリウス様はこんな事を始めたんだ?」


「私に聞かないで直接聞いてくださいよ。もうヤダ」


「ま、最近戦もなかったし、暇つぶしか。遊びかって所か?流石シリウス様だな」


「うーむ・・。私にもちゃんと話してくださらないし」


「へえ」


「そろそろ妃の一人でも娶ってくれればと思っていた矢先に」


「あはは、流石に黒髪はないだろ。そんな事したら皇子の信頼は全部なくなる」

「それは、ご本人もわかっているとは思うが・・」


「その女は今のところしっぽを出さないんだろ?」


「はあ。いっそ処刑してしまえば平穏な生活に戻れるのに」


「もしかしたら黒髪の一族の正体を暴くためにとか?」


「恐らくそうだと思うんだが。ただの暇つぶしにしてはリスクがありすぎる」


「だったら凄いじゃねえか。成し遂げたら瞬く間に英雄だ。・・ま、がんばれよ。俺はセシル皇子の後ろで見守ってるからな」


「他人事だと思ってお前は」


「ははは」


言うだけ言って部屋を出て行った。


「何しに来たんだあいつ。全く。」


_どうしたものか。