黒翼の淡恋

「この帝国領にお前のような黒髪の人間は存在しない」

「え・・」


シリウスの声が淡々と部屋に響く。


「このフォルトと同じ、栗毛色や赤、紫や青なんかもいるがな。
それが当たり前だ。俺もブロンドだ」


「・・・」


「どうして黒髪はいないのですか」


「闇に落ちた者の証拠だと、百年以上前から言い伝えられている。人に害をなす者とな」


ドクン


「言い伝えって・・そんな昔から!?」


「そうだ」


「黒髪の人は、全員悪人だと・・そういう事ですか!?実際そうだったのですか!?」


「さぁな?伝説じみているし、俺もほとんど見た事がない」


「そんな・・」


「しかし悪事を働いていた証拠は古い書物にあるのだからな。それは言い訳できまい」


「・・・」


ティファの顔は蒼白になった。

恐怖の寒気が全身を襲う。

人に対して微塵も敵意を抱いていないのだ。


「ですから、あなたは存在だけでも疑われて当然なのですよ」


と決めつける様にフォルトが言った。