黒翼の淡恋

おもむろにティファはシリウスの前に跪いた。

それにはフォルトが一番驚いていた。

自分の知っているティファとまるで別人だ。


「無礼をどうかお許しください。私たち兄妹は幼い頃から山奥で暮らし・・
ずっと母を殺した者に強い憎しみを抱いていました」


「・・・」


シリウスは黙って聞き入った。

怯え震えて弱々しいティファはそこにはいない。


「想像だけで母を殺した人物は悪人で、絶対に許せないと・・憎悪ばかりを抱き。
でも・・・あなたは違った。とても・・悪人には見えなかった」


「ティファ・・」


「私は・・シリウス皇子をお慕いしています。その心は・・記憶を取り戻しても変わりません」


「なら・・」


ふわりと、儚げにティファは微笑む。


「私を良くないと思う人の数が多すぎます。近くにいればあなたの害になりかねません」


「馬鹿・・今更そんな事気にしているのか?」


「はい・・あなたの為です」


ティファはシリウスの目をしばらく見つめた。

本当は離れたくなかった。

その思いは変わらなかった。

しかし。



「短い間でしたが、ありがとうございました。」


深く、お辞儀をした。