黒翼の淡恋

「ボクたち兄妹が、泥水を啜って生きていたことをお前は知るまい。お前たちがティファを見た時どうした?
黒髪だというだけで、蔑んだのではないか?汚い目でな。
それを作り上げたのはお前たち世の中の人間だ。
こっちはお前たちを憎まずにはいられないんだよ」


つかつかとシリウスの方へと近づいてくる。槍が恐ろしくない様だ。
槍が刺さり血が流れても気にせずに前に突き進む。

シリウスも負けじと口を開いた。


「では何故自分で来なかった。ティファは記憶を無くして城の前に倒れていた。
魔女と疑われ、すぐに殺されていたかもしれないんだぞ?」


「別の仕事があった。それに、お前がティファをすぐに殺さないと確信していたからさ。まあ、半分は賭けでもあったけどな」


「貴様・・」


ティファは二人のやり取りを見て震えあがった。

今にもお互いを刺しかねない程の威圧感だ。


「しかし、記憶喪失は意外だったよ。それでは確かに任務は遂行出来ないな」


ジロリ、と男はティファに目を移す。


それを見てシリウスはティファが離れない様に手を握った。


「シリウス皇子・・?」


「渡せない」


「え?」


「こんな危険な奴にお前を渡せない」


「失礼なやつだな。どれだけ偉いのお前は」


ヒュッ

ナイフがシリウスの鼻すれすれで空を舞った。


「妹は返してもらう。そして、お前はボクが殺すよ」