黒翼の淡恋

「わかりました・・・出ていきます」


涙を浮かべて、ティファは立ち上がる。


「でも、ここでの事は一生忘れません。シリウス皇子は・・私の命の恩人ですから」


「!」


その言葉に目を大きく見開いたのはシリウスの方だった。


「罪滅ぼしでもいいです。私に優しくしてくれて・・あり__」


「・・言うな」


とぼそりと耳もとで唸った。

細い体を、シリウスは抱きしめた。

強く、きつく。


「俺はお前の仇だ。優しい言葉をかけるな」


と、手に熱を込めた。

その手は何処か優しく感じた。


_記憶がよみがえれば、きっとお前は敵になる。俺を殺しに来るだろう。当然だ。



ドクドクと二人の鼓動が重なる。


しばらく抱き合ったまま黙った。


ティファにとっては幸せでもあった。

温もりを覚えていたくて何度も抱きしめ直した。


_シリウス皇子。


最初で最後の恋だと思った。