山道は真っ暗な中に立つ木々が不気味で、私はその道を通る時だけはお化けが出るんじゃないかと思いながら通っていました。しかし、山道の不気味さよりももっと怖いことが起こったのです。

私が歩いていると、前方から自転車が二台走ってくるのが見えました。こんな時間に自転車が走ってるなんて珍しいな、と思いながら私は自転車を避けようと思っていました。しかし、自転車は急に私の目の前に立ち塞がったのです。

私は「えっ！？何？」と心の中で驚きました。こんなことは人生で初めてで、相手を見つめるしかありません。相手は自分より少し年上くらいのピアスを開けたジャージ姿の男性でした。

「ねえ、名前教えて」

突然、男性からそう言われました。その時、今まで感じたことのない恐怖が私を襲ったのです。

私は犯罪ーーー特に誘拐や痴漢などに巻き込まれることなどないと思っていました。特別可愛いわけでもなく、女子力が高いわけでもない。そんな私に声をかけたり襲ってくる人物などいない。そう思っていました。