転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

ただでさえ妖精は魔力の強い者を好むのに、ディーはさらに彼らへの敬意を忘れない。この部屋に妖精が集ってディーの帰りを待ち侘びていたのも理解出来た。

ディーの所長室は広いが、執務机や応接セットの周りには魔法に使う道具や材料、書物などが山積みになっていた。散らかっている……というよりは、物が多すぎて置ききれないみたいだ。

所長室から続く扉の向こうは仮眠室と物置になっており、さらに鉱物やドライハーブなど物で溢れている。
所長室も仮眠室も、魔法使い以外からはさぞかし雑多に見えるだろう。けれどサマラはこの部屋を心地いいと思った。この部屋にあるのは自然のものや古いものなど妖精が好むものばかりだ。すべてのものに命が宿っているのを感じ、魔力が高まっていくような気がする。

「あたし知ってるわ。この子、ディーの娘よ。アリアン州に住む妖精から噂で聞いたの。夕焼け色の髪、若草色の瞳。ディーの愛娘なんだって」

部屋を飛び回っていた一匹の風の精が、サマラの肩に留まって得意そうに言った。妖精は噂が速いというのは、どうやら本当のことらしい。

「ディーの娘なの? それなら大歓迎だ!」
「魔力は似てないね。でも気配は似てるかな」
「名前は? 教えて、新しい子!」

おずおずと「……サマラよ。よろしくね」と答えると、頭上から光の粒が降り注がれた。

「サマラ! 新しい子、サマラに祝福を!」
「古き魔法使いの愛娘に祝福を!」

キラキラとした光の粒が体中を包む。それはまるで体に吸い込まれ、自分の魔力になっていくようだった。

「わあ……! ありがとう……!」