転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

期待とは違った答えが返ってきて、サマラは悲痛な叫びをあげた。
ディーなら必ず可哀想な妖精を助けてくれると思ったのに、彼にも出来ないことがあるなんてと落胆する。

サマラは俯いてスカートの裾を握りしめた。無力な自分が悔しくて涙が出てくる。

「……だが」

俯いていたサマラの耳に、カチャっと檻の鍵が開く音が聞こえた。

「この店の店主は行方不明となった。共同経営者もいないようだ。よって、この店の商品は領主である俺が預かる義務がある」

サマラが顔を上げると、檻から出されたメロウとセルキーが泳ぐように宙を舞っていた。その首に忌まわしい首輪はもうない。
他にもテントの奥に捕らえられていた妖精たちが、解放されて外へ飛び出していく。

「おとーさま……!」

サマラが目を輝かせて呼びかけると、すべての檻を開けたディーは「まあ、預かったところで店主に返す日が来るとも思えんがな」と言いながら、テントの外へ出ていった。

満面の笑みになったサマラがディーの後を追ってテントから出ようとしたとき、急に冷たい感触に手を掴まれた。驚いて振り返ると、檻から解放されたニクスの男の子がサマラの手を握っている。
肌が青く濡れている以外は、ニクスは人間によく似ている。この子はサマラより小さく、三歳くらいに見えた。

「どうしたの? もう怖い首輪はなくなったから、自由にしていいんだよ」

サマラが優しくそう話しかけると、ニクスは手を離し今度はサマラの腰にぎゅっとしがみついてきた。まるで迷子の子供だ。

「お、おとーさま、この子……」