転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

「そうか、それで俺の娘をブラックソーンの棘で傷つけようとしたのか。カレオの手を煩わせるとは、なかなか強力な魔力を持っているようだな。……ところで店主。俺もブラックソーンの妖精を有していてな」

そう言ってディーは手にしていた杖でコツッと地面を叩いた。その瞬間、隣に立っていた黒いドレスの女が水のようにトプンと地面に消え、辺り一帯に漆黒の影が広がる。

その禍々しさに周辺の人間がざわつく中、ディーは凍りつくような冷たい声を放った。

「娘と仲間が世話になった礼だ。受け取れ。お前の百倍は強力な冬と死の黒き女神だ」

立ち竦む店主の足もとから、鋭利な棘のついたブラックソーンの枝が無数に飛び出した。
肉を引き裂かれ絶叫しながら、店主は地面を覆う影の中へ沈んでいく。
最後に「お許しを……」と呻き声を残して、店主の体は完全に影の中へ沈んでしまった。

「し、死んじゃったの……？」

凄惨な光景に震えながら、サマラが尋ねた。
ディーは無言のままもう一度地面を杖で叩き、広がっていた影が杖に吸い込まれるように消えたのを見てから口を開く。

「さあな。ブラックソーンの精に預けた。ブラックソーンは冬と死の女神でもあると同時に、春と再生も司る。死んだとしても春になれば甦るんじゃないか。新芽の苗床として」

最後に口角を上げて言ったディーの言葉が冗談なのかどうか、サマラには判断がつかない。結局、妖精のみぞ知る……といったところだろうか。
まあ、領主で魔公爵の娘を殺そうとした罪を思えば終身刑が相応しいので、妥当かもしれないが。