転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

地面をゴロゴロと転がって痛みに呻く男たちの脛は、皆あらぬ方向に折れ曲がっていた。その奇怪な光景にサマラがゾッと鳥肌を立てたとき、「おっと。サマラ様は見ない方がいいですよ」と、剣帯に剣を収めたカレオが片手でサマラの目を覆った。

「すみませんね。サマラ様に傷ひとつつけないよう友人に頼まれているので。乱暴者にはちょっと転んでもらいました。ああでも、安心してください。みねうちだから骨折してるだけです。添え木をして安静にしていれば半年くらいで治りますから。俺の剣が先端以外、片刃でよかったですね」

カレオは呻く男たちに向かって淡々と話す。適うはずがないと悟ったのか、彼らも蹴り飛ばされた男もすっかり意気消沈し、這う這うの体で逃げ出そうとするが、怒りの冷めやらぬ者がまだひとり残っていた。

「くそっ! 剣士風情が俺の仲間をやりやがって! くそっ! くそっ!調子に乗るなよ!」

妖精売りの店主がテントの下から出てきて、カレオに杖の先を向ける。

「撃ち滅ぼせ! 冬と死の黒き女神!」

彼の命令に呼応して、杖から蔦のように細いブラックソーンの枝が無数に飛び出した。鋭い棘を持ったそれはものすごい勢いでカレオたちに向かってくる。

「ちっ」

カレオは素早く抜刀しそれを剣で打ち払ったが、枝は次から次へと襲い掛かってきた。
この世界で魔法使いとそうでない者の戦いは、力の差が顕著だ。今は常世のものにも対抗できる武器があるとはいえ、人間の持つ力は体力と腕力でしかない。
地風火水の力を操る魔法使いと対等にやり合うのは無謀ともいえる。