転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

ちっとも気が治まらないが、今は唇を噛みしめてこらえることにする。五歳の子供が暴れるよりも、この地を統治するディーに相談した方が賢明だと自分に言い聞かせて。

しかし、去っていこうとするカレオとサマラの周りを、どこからか現れた人相の悪い男が四人で取り囲んできた。

「おいおい、他人様の商売を邪魔して黙ってとんずらとはいただけねえな？」
「それなりに詫びが必要だよなあ？」

どうやら妖精売りの店主の仲間のようだ。サマラは青ざめ、周囲は不穏にざわついたが、カレオは足を止めただけで眉ひとつ動かさない。

「申し訳ありません。サマラ様は初めて市場に来たので、まだここでのルールがわかっていなかったのです。俺があらかじめお教えしなかったのが悪かったのです。お詫び申し上げますので、どうかお許しを」

ペコリとカレオは頭を下げたが、男たちは納得しないようだ。さらにカレオを包囲するように近づいてくる。

「はぁ？　お前まで頭の中ガキなのか？　謝って済む問題じゃねえだろ」
「誠意を見せろよ、お坊ちゃん。高そうな外套着やがって、どうせ金持ちのお坊ちゃんなんだろ？　痛い目見たくなかったら、有り金とそのご立派な身ぐるみ全部置いていきな」

（な、何よこいつら！　ただのゴロツキじゃない！　こんな奴らがうちの領地にいるなんて……ディーに言いつけてやるから！）

口に出してはまずいことくらいはサマラも理解しているので、心の中だけで男たちを罵った。しかしうっかり顔に出てしまっていたようで、男の内のひとりがサマラに近づき睨みつける。