転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

この二週間でサマラは随分と妖精に触れてきた。彼らはいつだって人々のそばにいて、気まぐれながらたくさんの手助けをしてくれる、『良き隣人』なのだ。
その尊さと愛しさを知れば、こんな残酷なことは出来ないはずだ。

我慢できず糾弾したサマラを、店主のオヤジが人相悪く睨みつける。

「あぁん? なんだこのガキは。人の商売にケチ付けやがって。こちとら魔力のない可哀想な人間に妖精を飼わせてやろうって親切で商売やってんだよ。子供が口を挟むんじゃねえ!」

しかしサマラは負けじと店主を睨み返す。サマラはもともと大人なんか怖がらないほど負けん気が強い性格なのだ。

「す、すみません、店主。サマラ様、ほら、商売の邪魔しちゃだめですよ」

しかし、慌てて人垣を掻き分けてやって来たカレオが、サマラを再び抱き上げてしまう。サマラはジタバタと抵抗しながら「離して! あの水の精たち放っておけないよ!」と喚くが、手を離してはもらえない。

「駄目ですよ、サマラ様。見るに堪えないものではあるけれど、この店主のしていることは合法です。我々が咎める権利はありません。それどころか商売の邪魔をした罪で捕まってしまいます。閣下にご迷惑をかけることになりますよ」

「……っ! うう……」

ディーに迷惑がかかると言われては、サマラもおとなしくせざるを得ない。彼の領地で娘が問題を起こせば、確かに評判はがた落ちだろう。

(でも! こんなの絶対おかしいよ! ディーだって見たらきっと怒るはずなのに!)