しゃくり上げていると、ベンチから立ち上がったカレオが晴れ晴れとした笑顔でこちらにやって来た。

「愛されてますねえ、閣下。やっぱ親子はこうでなくっちゃ」

「うるさい。黙れ」

カレオはディーに抱っこされているサマラの頭を優しく撫でてくれると、「でもこんなに泣くってことは、サマラ様はまだ聞いてないみたいですね」と何か含んだような言い方をした。

「え?」

小さな手でグシグシと目をこすりながらディーの顔を見ると、彼は相変わらず愛想のない表情のまま口を開きかけて一度噤んだ。そしてサマラが不思議そうに小首を傾げると、「……今日は発たない。ここには一ヶ月滞在することにした」と告げた。

「……一ヶ月? ……本当?」

「嘘などつかん」

その言葉の意味を噛みしめるように、サマラはじわじわと笑顔になっていった。涙の最後のひと粒が輪郭を伝って落ちると同時に、満開の笑顔が咲く。

「やったー!! おとーさまと一緒! ばんざーい!!」

思わず両手を高く掲げてしまいバランスを崩したサマラの体を、ディーの手がサッと支える。危うく落ちそうになったサマラが気恥ずかしそうに肩を竦め「ごめんなさい」と言うと、ディーは呆れたように、けれど口もとに浅い弧を描きながら「手が掛かるな」と呟いた。

「よかったですねえ、サマラ様。これでもっといっぱい閣下とお喋りできますよ」

「うん! ありがとうございます、カレオさま! カレオさまも一緒なんですよね? 嬉しいな」

「俺もサマラ様と一ヶ月過ごせて嬉しいです。俺ともいっぱいお喋りしてくださいね」

「もちろん! よろしくお願いします」