転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

今までの行いがあまりにも悪すぎたのだ。これっぽっちも魔法に興味を示さなかったくせに、いきなり図々しく『魔法使いになりたい』などと、舐めてると思われても仕方がない。

(ヤバい、逆効果だった。『魔法なんてチョロいに決まってるわ~。将来は魔法使いになっちゃおうかな、今思いついたけど!』って思ってるって思われたかな。大失敗だった~。なんとか挽回しなくっちゃ)

サマラは動揺を悟られぬよう笑顔を貼り付けながら背中にダラダラ汗を流す。そして頭から煙が出そうなほど脳みそをフル回転させて活路を探した。

「はい。お言葉、心に留めさせていただきます。それで、あの……お願いなのですが。お屋敷に滞在されている間、私に魔法のてほどきをしていただけないでしょうか?」

――『私に魔法の手ほどきをしていただけないでしょうか?』
これは『魔法の国の恋人』でリリザがディーに急接近したときの台詞だ。どうしても魔法がうまくいかないリリザはディーに魔法の手ほどきをして欲しいと頼み、師と弟子の関係になってふたりの距離は一気に縮まるのだ。

リリザの台詞を奪ってまで窮地を潜り抜けようと思ったサマラだが……現実は甘くない。

「断る」

躊躇なく却下され、サマラは笑顔を強張らせながら(もう駄目だ)と思った。
自分は選択肢を連続で間違え続け、もはやディー攻略の道は閉ざされてしまったのだと絶望した。ディーと出会ってわずか数時間で積んでしまい、乙女ゲームマスターとはなんだったのかと恥ずかしくなってくる。

すると固まってしまったサマラを見てディーはハッとした顔をしたあと、小さく咳払いをしてから姿勢を正した。