転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

そのためにも日々妖精への感謝と敬意は忘れてはならない。

そして魔力は妖精に干渉できる力の大きさだ。魔力の強さは遺伝でほぼ決まるが、努力次第で多少伸ばすことも出来る。

莫大な魔力を持つ大魔法使いのディーは、当然従えられる妖精の数も多い。この屋敷のメイドや給仕係、料理人らも、実はすべて彼が契約して使い魔となった家事妖精だ。使用人の中で人間は筆頭執事のジョナサンだけである。

クロイチゴはそんな妖精たちの好む果物だ。特に秋分が近いこの季節は、夢と幻想の妖精・マブにクロイチゴのワインやパイを備えるのが習わしとなっている。
この屋敷の庭にはクロイチゴがたくさん実っているが、人間だけで食べ尽くしてはいけないルールもある。しかし去年のサマラはそんなルールを無視し実っていたクロイチゴをすべて摘んで食べてしまったという黒歴史があったのだ。

(あぶない、あぶない。魔法と妖精を粗末に扱ったらディーの地雷を踏んじゃうもんね。マブのこと思い出してよかったー!)

サマラはまたひとつ選択肢を正しくクリアしたことに、心の中でガッツポーズする。

「おとーさまは普段王宮でどんなものを召し上がってるのですか?」

ゼリーをスプーンで掬いながら尋ねたサマラに、ディーは晩餐のときのように口を噤んで考え込んでしまった。どうやら彼は日常会話があまり得意ではないらしい。

「そんなことを聞いてどうする」

あげく、この返答である。サマラは自分を捨てて逃げた母のことを蔑んでさえいるが、この会話もままならぬ男と夫婦になり生活を営めたことだけは感心する。