転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

「まだたったの十二年前のことだ。そんなに経っていない。見た目は大きくなったが、まだまだあれは子供だ。俺から見れば五歳の頃と変わらない」

そう語った口調は、いつもよりぶっきらぼうだ。そこに父親としての心境を感じ、カレオは眉尻を下げて笑う。

「俺は今から心配ですよ。あと数年してサマラ様が嫁がれたら、閣下がどれほどしょんぼりすることか」

「……馬鹿を言え。そんなに簡単には嫁がせん。あと数年などということはあり得ない」

「ははっ、しょんぼりすることは否定しないんですね」

「……やはり交際など許可すべきじゃなかったな。別れさせてくる」

すっかり眉間に皴を増やしたディーが、サマラとレヴのもとへ向かって歩き出そうとする。どうやらカレオが少し煽りすぎたようだ。
カレオは慌ててディーを止めると、「駄目ですよ! 横暴な父親は娘に嫌われます! 世界の常識ですよ」と宥めた。

身に覚えのあるディーはピタリと足を止めると、視線の先のサマラを見て深く嘆息する。

「……面倒だな、父親とは。あれが笑ったり泣いたりするたびに、こちらの心まで掻き乱される。おかげであれと暮らすようになってから、一時も冷静でいられない。きっとこれが……幸せというものなんだろうな」

妖精の煌めきに囲まれたサマラの笑顔が眩しくて、ディーは思わず目を細める。
すると、ディーの視線に気づいたサマラが嬉しそうにこちらへ小走りで向かってきた。

「お父様!」

目の前までやって来たサマラは満面の笑みを見せ、ディーの服の裾を掴みながらつま先立ちをした。
ディーが腰を屈めてあげると、サマラは彼の耳に顔を寄せこっそりと告げる。