転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました


「ねえ、レヴ。クロイチゴのパイは食べた? うちの家事妖精が作るパイは絶品なんだから、食べて食べて!」

招待客への挨拶がひと通り済んだサマラは、さっそくレヴの腕を掴まえて料理の並ぶテーブルへと向かう。
そして彼の皿に次々と料理や菓子を乗せては、「もういいって、ストップ! ストップ!」と止められた。

「盛りすぎだっての。お前いっつも俺に山盛り食わせようとするよな」

「だって、レヴが私と同じものを食べられるようになったのが嬉しいんだもの」

以前は体が受け付けなかった加工品や肉も、人間になった今のレヴならば食べられる。
些細なことだけど、サマラにはそれが嬉しかった。

「それに、男の子はいっぱい食べなくちゃね」

ニコニコしながら最後にミニケーキをひとつお皿に乗せたサマラに、レヴも肩を竦めて苦笑する。

「太ったらお前のせいだからな」

「太らないよ、成長期だもん。どんどん背が伸びるだけ」

「よく自信満々にテキトーなこと言えるな」

パイを口にしながら笑い合うふたりの周りに、花の精が花びらのシャワーを降り注ぐ。
庭には優しい風が吹き、オリーブの木陰からキラキラと木漏れ日が煌めいていた。

そんな多幸感あふれる景色を、少し離れた場所からディーとカレオが見つめている。
ふたりとも穏やかな笑みの陰に、少しだけ寂しさを隠しながら。

「大きくなりましたね、サマラ様も。閣下の首にしがみついて泣いていたのが、なんだか遠い昔に感じられます」