転生悪役幼女は最恐パパの愛娘になりました

サマラが反抗して家を出ても、勝手にレヴを助けようとして大惨事を起こしても、ディーは決して娘を見捨てない。

「……これからはお前の話をもっと聞いてやる。だから二度と勝手な真似はするな」

胸に縋りついて泣くサマラの背を、ディーは強く抱き寄せてくれた。
そのぬくもりの大切さを改めて深く胸に刻むと、サマラは鼻をすすりこぶしで涙を拭って顔を上げた。

「お父様、お願いです。知恵を貸してください。どうしたらレヴを元に戻してあげられますか?」

気を取り直してディーにそう尋ねる。このままでは被害がどこまで広がるかわからないし、レヴは魔物と認定され王宮の魔法官に攻撃されてしまうだろう。
最悪な結末を迎える前に、彼をなんとか元の姿に戻さねばならない。

ディーはサマラをしっかり抱えながら、旋回するカラドリオスの背からジッと魔人を眺めた。

「……闇魔法の気配を察知して来たが、やはりあれはレヴなのか。……なんて姿だ」

憐れむように目を眇め、ディーは密かに奥歯を噛みしめる。

「リリザが作った魔力増幅剤を浴びたら、ああなってしまったの。魔力が異常なほど増幅して、レヴ自身にも制御出来なくなって……闇の精霊に呑まれてしまったみたい」

「ならば、闇の精霊を振り払いレヴの精神を戻してやることだ」

ディーの説明によるとレヴの精神は闇の精霊に取り込まれ、常世の深淵に引きずり込まれているのだという。要は仮死状態に近い。
侵されている体から闇の精霊を払い、常世の深層にいる精神を現世まで引き上げてやることで、レヴはもとの状態に戻るということだ。