「閣下は恥ずかしがり屋なんです。それにサマラ様みたいな小さな女の子とどう接していいかわからないんですよ。怒ってるわけじゃありませんから、心配しなくて平気ですよ」
その言葉を聞いて、サマラはホッとした。ディーの好感度を上げなくてはならない大事なときに失敗は許されないのだ。
「ねえ、カレオさま。カレオさまはおとーさまのこと、いっぱい知ってるの?」
せっかくカレオとふたりきりになれたのでこの隙にディーの情報を集めようとサマラは考えた。ウナギのゼリーのように、ファンブックに載っていなかった情報が露になるかもしれない。
「そりゃまあ、一緒に命がけの旅をした仲間ですから」
カレオははにかんだように、けれどどこか得意そうに笑う。きっと彼にとってディーと旅をしたことはとても誇らしいことなのだろう。
「じゃあ、おとーさまのお好きなものを教えてください。私は離れて暮らしていたから、おとーさまのことをあまり知らないのです」
サマラのお願いに、カレオは一度瞬きをしたあと男らしい顔をクシャッと綻ばせた。
「それは閣下に直接聞いた方がいいですよ」
容易く教えてもらえると思ったのに、予想外の答えにサマラは「でも……」と戸惑う。けれどカレオはサマラに向かって少しだけ身を乗り出すと、笑顔で告げた。
「閣下といっぱいお話してください、親子なんだから。せっかく五年ぶりの再会なんです。五年分のお喋りがサマラ様のここに溜まっているでしょう?」
そう言ってカレオはポンポンと自分の胸を叩いて見せた。サマラは大きく目を見開いたまま自分の胸に手をあて、小さく頷く。



